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韓非

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韓非子-五蠹[未完.3]

古者、蒼頡そうけつ書をす、自ら環する之を私と謂ひ、私に背く之を公と謂ひ、公私の相背くなりて、乃ち蒼頡もとより之を知る。
今、以て同利と為す者、察せざるの患なり。
然れば則ち匹夫の為に計るに、行義を修めて文学を習ふにくは莫し。
行義を修むれば則ち信にあらはれ、信に見はれば則ち事を受く。
文学を習へば則ち明師と為り、明師と為れば則ち顕栄けんえいなり。
此れ匹夫の美なり。
然らば則ち無功にして事を受け、無爵にして顕栄、為に政の此の如くなれば、則ち国は必ず乱れ、主は必ず危し。

現代語訳・抄訳

遥か太古の昔に蒼頡は文字を作ったが、その文字を見れば、自らにめぐらす者を私といい、私に背く者を公としている。
これは公私の互いに相反することを言っており、蒼頡はその原則を知っていたわけである。
従って、公私を同様に見てその利を同じにするというのは、何もわかっていないと言わざるを得ない。
今の世を鑑みると、くだらぬ人物の身になって考えてみれば、ただ行儀を正しくし、文学に詳しくなることが一番良いのであろう。
行儀が正しくなれば如何にも信であるかのように見られ、信だと思われれば用いられることになる。
文学に詳しくなれば明師と呼ばれ、明師と呼ばれるようになれば名声が高まるであろう。
これらはくだらぬ人物にとってはこの上ない誉れなのである。
このような事が行われていると、大して功を為さぬにも関わらず用いられ、爵位なくても名声は高いという風になる。
これが政治に用いられれば国は乱れ、主君は必ず脅かされることになるであろう。

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語句解説

蒼頡(そうけつ)
蒼頡。漢字を発明したとされる古代中国の伝説上の人物。黄帝に仕える史官であったとされる。
顕栄(けんえい)
名が顕れて身が栄えること。
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